2.6.9.特別取締役制度について

 大会社になると取締役の数が多く、機動的に取締役会を開催することが困難である。
 そこで、取締役会の決定を機動的に行うことができるように、改正前は、重要財産委員会という機関が取締役会とは別にあった。
 
 改正前の重要財産委員会について簡単に述べると、
 
 1 重要財産委員会は取締役会の決議で設置する。
 2 取締役の数が10名以上必要である。
 3 取締役の中に社外取締役が1名以上必要である。
 4 重要財産委員会は取締役3人以上で組織する取締役会とは別の組織である。
 5 「重要なる財産の処分及び譲受」「多額の借財」の決定につき取締役会から具体的に委任を受けた事項につてのみ決定できる。
 
 とされていた。
 
 ところが、実際に重要財産委員会を置く会社はまれであり、会社法では以下の点の改正を行った。
 
 まず、重要財産委員会制度は廃止し、これにかわるものとして、特別取締役による取締役会の決議を創設した。
 
 特別取締役による取締役会の決議とは、重要財産委員会のように取締役会とは別の機関を設けるのでなく、あくまでも取締役会で決議する事項のうち会社法362条第4項第1号(重要な財産の処分及び譲受け)及び第2号(多額の借財)にあげる事項については、あらかじめ選定した3人以上の特別取締役だけで決議することができる(会社法373条1項)ということである。
 
 つまり、取締役会の決議は、決議に加わることができる取締役全員でするのが原則であるが(会社法369条1項)、上記の一定の事項については、あらかじめ定めた特別取締役だけで決議できる特則を設けたのである。
 
 改正前は決議する事項について、取締役会から具体的に委任される必要があったが、改正後は取締役会から上記一定の事項について包括的に委任されたものとして、当然に「重要なる財産の処分及び譲受け」「多額の借財」について決議ができる。
 
 特別取締役の選定をすることができる株式会社は、取締役会を設置した株式会社(委員会等設置会社を除く。)であって、次に掲げる要件に該当する必要がある。(会社法373条1項)
 
 1 取締役の数が6人以上であること。
 2 取締役のうち1人以上が社外取締役であること。
 
 改正前の10人以上から6人以上に取締役の数が緩和された。
 
 なお、特別取締役による取締役会の決議については,書面決議を認められない。(会社法373条4項で370条を除外している。)
 これは、制度の趣旨から、当然すぐに招集可能な取締役が特別取締役に選任されていると考えられるからである。
 
 また、特別取締役による取締役会を機動的に開催する必要があるので、監査役の出席義務についても、特則が設けられている。
 複数の監査役が設置された株式会社における特別取締役による取締役会については、監査役の互選により当該取締役会に出席すべき監査役を定めたときは、その定められた監査役以外の監査役は出席義務を負わないものとしている。(会社法383条ただし書き)
 
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Last-modified: 2024-04-09 (火) 10:17:58