2.7.3.会計監査人について †改正前は、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)だけが会計監査人を置くことができた。(正確に言えば、置く義務があった。) そして、改正前は中会社(資本金が1億円を超え5億円未満で、かつ負債200億円未満の会社)という区分があって、中会社では定款に定めることにより大会社の特例を受ける「みなし大会社」という制度があったので、定款で定めれば会計監査人を置くことが可能であった。 しかし、資本金1億円以下かつ負債200億円未満の会社(以下、小会社という)では、会計監査人を置くことができなかった。 しかし、このような基準で、会社の規模を決めて、3つの区分で、会計監査人の設置・監査役の権限に差異を置くことは実益性が乏しく、小会社においてもガバナンスの強化が必要であることは当然でり、会社機関設計の柔軟化から、会社法により以下の点が改正された。 1.大会社は会計監査人の設置義務があり(会社法328条)、その他の中会社・小会社は、定款に定めることにより、会計監査人を置くことができる(会社法326条2項)としている。(ただし、委員会を設置した場合は、会計監査人の設置義務がある(会社法327条5項)) 2.小会社の監査役も含め、すべての会社の監査役は、原則として会計監査権限のほか業務監査権限も有する。(会社法381条1項) このように、小会社でも会計監査人を置くことが可能となり、監査役の権限も業務監査権限を有するようになったので、小会社と中会社での違いがなくなったので、小会社と中会社という区分を廃止した。 会計監査人の欠格事由として、公認会計士法の規定により会社の計算書類について監査することができない者及び本人またはその配偶者が当該会社の子会社またはその役員などから会計監査人の業務以外の業務により継続的に報酬を受けいている場合(会社法337条3項)と規定し、改正前にあった、業務の停止処分を受け、その停止の期間を経過しない者などの規定は削除された。 会計監査人の業務執行機関からの独立性を強化するため、会計監査人の選解任(会社法344条1項)だけでなく、会計監査人の報酬についても、その決定をするには、監査役の同意を得なければならない旨規定した。(会社法399条) 会計監査人の株式会社に対する責任についても、取締役の任務懈怠責任と同じく会社法423条の損害賠償責任がある。 その他、法務省令で、会計監査人が不適法意見を述べる場合又は監査のための必要な調査をすることができなかった旨を述べる場合には、決算公告において、その旨を明示しなければならないものと規定することになっている。 会計監査人を設置した旨及び当該会計監査人の氏名又は名称は、登記事項である。(会社法911条3項19号) |