***2.機関設計をするための基本規定 [#s65ab64b] 会社機関設計の基本は、会社法326条から328条に規定されている。 株式会社には取締役が最低1名いればよく、その他の機関につては任意であり、置いても置かなくてもかまわない。置く場合には、定款に記載する必要である。(会社法326条) しかし、不特定多数の人が株主になるかもしれない公開会社や大会社については、一定のガバナンスが必要でり、また選択する機関設計によっては規制も必要である。 そこで、会社法では下記のような規制が規定されている。(会社法327条・328条) 株式の譲渡制限をしていない会社と監査役会を設置した会社及び委員会設置会社については、取締役会の設置が義務づけられ、これらの会社では、必ず取締役会を置く必要がある。(327条1項) また、取締役会を置いている会社では、株主総会の権限が制限され(会社法295条2項)、会社の業務執行は取締役会が行うことになるので(会社法362条2項)、取締役会を監督する機関として監査役を必ず置かなければならないことになっている。(327条2項) 監査役は基本的には業務監査権限と会計監査権限の二つの権限を持つのが原則である(会社法381条1項)が、大会社でない譲渡制限会社では、業務監査を監査役に任せるよりも株主が直接監督する方が効果的な場合もある。 そこで、監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く譲渡制限会社の場合、定款に定めることによって、監査役の権限を会計監査権限だけにすることができる。(会社法389条) そして、この場合には株主の監督権限は強化されることになっている。(会社法367条・357条・360条) したがって、大会社でない譲渡制限会社では、取締役会を設置しても会計監査権限のみの監査役がいればいいことになる。ということは、会計について何も知らない会計監査権限のみの監査役を置くよりも公認会計士や税理士などの資格を持った会計参与を置く方が会社のためになるのではないかということで、大会社でない譲渡制限会社の場合は、取締役会を置いても会計参与を置けば監査役を置かなくてもいいことにしたのである。(327条2項ただし書き) 大会社では、株式の譲渡制限をしても会計監査人を必ず置かなければならないので(会社法328条2項)必ず業務監査権限のある監査役を置く必要がある。(会社法327条3項)したがって、会計参与を置いても監査役は必要になる。 なお、会計監査人を置くと委員会設置会社を除いて業務監査権限のある監査役を置かなければならない(会社法327条3項)のは、会計監査人が経営陣から独立した機関にするためである。 つまり、会計監査人の選任及び解任には監査役の同意を必要にし(会社法344条)、会計監査人の報酬についても監査役の同意を必要としている。(会社法399条)これにより会計監査人の独立を担保しているのである。 その他、委員会設置会社は監査役を置いてはならない旨規定している。(会社法327条4項) これは、委員会設置会社には監査委員会があるためである。 また、委員会設置会社は、会計監査人を置かなければならない旨規定されている。(会社法327条5項) これは、委員会設置会社では執行役に大きな権限が与えられるため、その業務の適正を確保するため、財務の監督を会計監査人に行わせる必要があるからである。 大会社では会計監査人を必ず置かなければならないことになっている。(会社法328条・委員会を置いた場合は、会社法327条5項) そして、株式の譲渡制限をしていない大会社では、委員会設置会社を除いて、監査役会を置く必要がある。(会社法328条1項) 以上の基本規定に基づいて、4つの会社タイプ別に、機関設計を決めることになる。 ▲ 新会社法の改正ポイント ▲ < > 2.4.3.大会社でない譲渡制限会社の機関設計 #author("2025-03-13T22:18:55+09:00","default:massy","massy")