「エガちゃんねる」炎上で学んだ"炎上回避"の極意 人は「理由がわからないもの」を叩くという 藤野 義明 : 演出家、ディレクター 印刷 無料会員登録はこちら ログインはこちら 拡大 (写真:『エガちゃんねる 10億回再生 下品の流儀』より) 朝まで飲んでいたノリのいい人たちとの絡みが面白いものになったと思ったものの、その中の、あるお姉様に「おっぱいちょっと揉もませて」と何度もお願いする場面が問題シーンとなってしまいました。「カメラ前で『揉ませて』と言われたら断れない」「このチャンネルでは初めて途中で観るのをやめた」といったコメントが殺到し、一度動画を公開停止しました。 この件は、「あの動画また観たいです」というリクエストが多かったこともあり、かなり時間が経ってから再アップしたら、再びは炎上せず。今思えばプチ炎上くらいだったのかもしれません。 対して、あきらかな大炎上だったのが2023年6月の「マグロ祭り」です。 ことの発端は、「【江頭釣り部】江頭、伝説の巨大モンスターマグロを釣る!」の動画で、江頭さんが52キロのモンスターキハダマグロを釣り上げたこと。 本番に強い男の面目躍如ですが、これを記念して、江頭さんが釣り上げたマグロそのものではないものの、築地で場所をお借りして、"あたおか"のみなさんにキハダマグロを無料で振る舞うことにしました。 僕らとしても混雑することはある程度予想していたので、混乱を避けるために、先着1000名限定。そして朝7時から東京・築地本願寺で整理券を配布することに。 事前のお願いで「近隣の迷惑になるため7時前には来ないでくださいね」とアナウンスして迎えた本番当日。僕らスタッフが6時15分に本願寺に到着したところ、もう300人近くが築地本願寺の中に。 「7時前には来ない」というルールがあるので、その人たちにはいったん築地本願寺から出てもらうことも考えましたが、そうすると逆に築地の人たちに迷惑がかかってしまう。そこからどんどん人は増えていき、6時45分頃には800人くらいの人だかりになってしまいました。 警備会社のトップの人から「これ以上集まると事故が起きてしまうからもう整理券を配ったほうがいいです」と言われ、最終的には僕の判断で、その時点で整理券を配る決定をしました。 ルールを厳格に適用するなら、7時前に集まった人には整理券を配らない、という方法もあったかもしれません。でも、その中には小さなお子さんもたくさんいて、「エガちゃんに会えるのが楽しみ〜」といった声を聞いてしまうと、僕にその決断はできませんでした。 ルールを守ったお客さんから怒りの声が… 江頭さんはこの時、整理券配布会場にはおらず、「マグロ祭り」の会場に。この状況を江頭さんに伝えると、気にしてしまってマグロ祭りに影響が出そうだったので、ブリーフ団と相談した結果、江頭さんには本番が終わるまでは伝えないことにしました。 そしてイベント終了直後に「江頭さん、じつはめちゃくちゃ炎上しています」と江頭さんに事態を報告。その後、すぐに事務所に戻って謝罪動画「"エガちゃんねるマグロ祭り"が終わって」を撮影して緊急公開しました。 僕が「エガちゃんねる」に映る場合は通常、マスクをかぶって「ブリーフ団D」として出るのですが、この時はマスクをせず、制作責任者の藤野義明として謝罪させていただきました。 謝罪動画では、なぜ混乱が起きてしまったのかの経緯と、どの部分で見通しが甘かったのかといった原因を説明。準備不足、想定不足、勉強不足に経験不足と、さまざまな点で不足だらけだったことを告白し、一度体制を整えるために動画を1週間休むことをお伝えしました。大炎上から即日の謝罪動画によって混乱の沈静化は比較的早くできたのかもしれません。 この「マグロ祭り」は、あたおかに喜んでもらいたいという気持ちだけで「無料」で開催し、番組としては会場のレンタル費、テントなどの設置代、警備代などで500万円くらいの出費でした。あたおかのためを思って500万円自腹で開催してみたら、あたおか激怒で大炎上。俺たちはいったい何をやってるんだ……と、あの時はちょっと泣きそうになりましたね(笑)。 その中で得た一番の教訓は「無料」と「先着順」は炎上の元、ということ。みなさまも何かイベントごとを開催する場合には、「無料」と「先着順」にはご注意を。 ドッキリの流儀「これって、なんでやるんだっけ?」 ここがしっかりしていないと、ドッキリが炎上してしまうことも。「エガちゃんがかわいそう」といった反応が起き、その声が大きくなってしまうと、せっかくの笑いも笑えなくなってしまいます。 たとえば、「【問題作】ブリーフ団が辞めるドッキリを仕掛けたら、とんでもないことになった」という動画の場合。この企画は「ブリーフ団Lが会社の金を横領してしまいブリーフ団を辞めることになるかも、と江頭さんに相談した場合にどんな反応になるか」という内容で、Lを救いたい江頭さんが一緒に悩み、返済金の肩代わりを提案し、名言までも連発してしまう、という、江頭さんのちょっとカッコいい一面が出た動画となりました。 ただ、なんの前提もなしにLが「ブリーフ団を辞めます」と切り出し、江頭さんを悩ます内容にしてしまうと、「エガちゃんの心を弄ぶなんて」「再生数が欲しいだけだろう!」といった反感を買ってしまいます。この動画でのロジックはというと……。 じつは少し前の大食い動画のロケの際、たまたま流れで「Lが完食しなければ退団」という話になり、江頭さんが「Lがいなくなっても大丈夫」と冗談で切り返す場面がありました。この発言があったから、この「ブリーフ団Lが辞めるドッキリ」ができる、となったのです。 「江頭さんはブリーフ団を実際どう思っているのか」「本当にいなくなっても大丈夫なのか確かめたい」という導入部で、ドッキリをする意味を視聴者に向けてしっかりと提示。前フリがあるからこそ、視聴者も「いいのかな?」と引っかからずに観ることができます。 おかげさまでこの動画は「視聴者が選ぶ神回ランキング」で2023年の1位に輝きました。 「常に何かで炎上」しているのがネットの世界 エガちゃんねる 10億回再生 下品の流儀 こんなドッキリやりたいなと思っていたけどやる理由が見つからないまま時間は過ぎていったのですが、「好きなユーチューバーランキング」で2連覇を果たしたタイミングで、やる理由ができました。 「連覇したことで江頭さんが浮かれていないか、天狗になっていないかをチェックしたい」。「江頭さんが人気者になっても変わっていないかを知りたい」というロジックがあることで、観る側のモチベーションも上がります。 ユーチューブをはじめ、常に何かで炎上しているネットの世界。燃える要因はいくつもあるのでしょうが、1つは「なぜこんなことをするのかわからない」といったもの。人は理由がわからないものを叩きがちです。だからこそ、今の時代は思考の過程を丁寧に伝えることが大事だと考えています。 2025-03-13 (木) 21:54:53
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