天皇、皇后両陛下ご訪英同行記 †晴れやかなご表情、国際親善の旅始まる ホテルへ向かわれるルートに「英国側の配慮」 †天皇、皇后両陛下ご訪英同行記(1) ライフ 皇室 Xでポストする 天皇、皇后両陛下が英国に到着された。両陛下にとって、国際親善目的では即位後初めての英国ご訪問で、日本の天皇皇后の国賓としての訪英は26年ぶり。両陛下のゆかりの深い英国ご訪問の舞台裏を、同行記者がつづります。 両陛下、英国ご到着 25日から公式行事 22日午前10時40分、快晴の羽田空港。日英両国の国旗がはためく駐機場に、重要行事に臨まれることを示す赤地の「天皇旗」を掲げた天皇、皇后両陛下の「御料車」が到着した。 ほどなくして貴賓室から姿を見せた両陛下は、見送りの関係者らにあいさつし、最後に秋篠宮ご夫妻と丁寧に会釈を交わしてタラップへと進まれた。 一昨年、英女王エリザベス2世の国葬参列のため英国へと向かわれる際には、色を抑えたグレートーンの服装に、マスク姿だった両陛下。今回、陛下のネクタイと皇后さまのお召し物は明るい水色でそろえられ、青空の下で見送りに応じられるお二方の晴れやかな笑顔には、コロナ禍による延期を経て実現した英国訪問への感慨がにじんでいるようにも見えた。 両陛下が搭乗されたのは、両翼と尾翼に日の丸を配した政府専用機。防衛省の特別航空輸送隊が運航しており、機内での飲み物や食事の提供などのサービスも航空自衛官が担う。メニューもさまざまで、この日のドリンクリストには、石川県能登半島最古の蔵の日本酒などが並んでいた。ただ、両陛下のお席とは区画されており、同行記者が機中のご様子をうかがい知ることはできなかった。 午前11時すぎ、専用機は離陸。直後、「線状降水帯により大きな揺れが予想される」とのアナウンスがあったものの、安定した飛行が続き、高度を上げて雲海のはるか上に達するころには、昼食の提供も終わって機内も静まり返っていた。 出発から約14時間後、専用機は無事、ロンドン郊外のスタンステッド空港に到着。英国の午後6時前、周囲は昼間のように明るい。タラップに姿を見せた両陛下は、長時間のフライトの疲れを感じさせない穏やかな表情で、出迎えた関係者一人一人と握手を交わされた。 その後、両陛下は「国王のベントレー」と呼ばれる、国王から国賓に貸与される特別な車で、宿泊先のロンドン中心部のホテルへと向かわれた。 宮内庁によると、道中では、国賓の歓迎式典が行われるホースガーズ広場や、馬車列が走るザ・マルと呼ばれる大通り、さらに、バッキンガム宮殿の周辺も通られた。「英国側の配慮が感じられるルート」(同庁幹部)だったという。 国賓としての公式行事は25日から、3日間にわたり行われる。 (緒方優子) ご訪英で在留邦人らに高まる期待 「陛下ー!」と街頭で歓迎の声も †天皇、皇后両陛下ご訪英同行記(2) ライフ 皇室 Xでポストする 天皇、皇后両陛下の英国ご到着から一夜明けた23日午前、取材の空き時間に、25日の公式行事の会場となるロンドン、バッキンガム宮殿へと続く「ザ・マル」と呼ばれる大通りを訪れた。この日は日曜日。観光客に人気の宮殿の恒例行事、「衛兵交代式」の時間とも重なり、通りは大勢の人でにぎわっていた。 通りの両側には、両陛下のご訪問に合わせて日英の国旗がずらりと並び、その近くで記念撮影する日本人らの姿も多見られた。 10年以上英国で暮らしているという会社員の男性(46)は、両陛下の来訪に「日本人としてうれしい」と笑顔を見せ、「ご訪問が、両国の人々の距離感を実感としても近づける機会になれば」と期待を寄せた。 英国人の夫と結婚して日本から英国に移り住んだという40代女性も、ご訪英が「とても楽しみだった」と話し、日英の国旗をバックに記念撮影。女性は、チャールズ国王とキャサリン皇太子妃ががん治療を公表していることに触れ、「英王室も大変な時だが、両陛下のご訪問を温かく迎えてくれていると感じる」と感慨深げだった。夫は、「日本の天皇皇后はオックスフォード大に留学していたと妻から聞き、好感を持っている」と話した。 一方、通りの周辺には、さまざまな国籍の観光客も集まっていた。ハンガリーから家族で訪れたという女性からは逆に、「日本の旗があるが、誰か来るのか」と尋ねられた。両陛下のご訪英を伝えると、納得した様子で、「王室や皇室は、たとえ政治的に難しい関係にあるときにも、国と国、人と人とをつなぐことができる。王室がある国を、うらやましいと思うこともある」と話した。 25日、両陛下は国王夫妻とともに、この大通りを馬車列でパレードされる予定だ。そのお姿は、現地に住む日本人や英国人、そして世界中から訪れた人々の目に、どのように映るのだろうかー。通りを歩きながら、そんな想像を巡らせた。 両陛下のご訪英に対する在留邦人の期待の高まりや歓迎ぶりは、この日午後からの陛下のご視察先や、面会の場面の取材でも感じられた。 午後2時すぎ、天皇陛下が訪問された「ジャパン・ハウス ロンドン」。建物の周辺にはご到着の1時間以上前から多くの人が集まり、到着した陛下が車から降りて姿を見せられると、「陛下ー!陛下ー!」と、大きな歓声が上がった。陛下は集まった人に手を振って応えられ、建物の中へ。その後も窓越しに日の丸を振る人たちに、にこやかに応じられていた。 夕方から宿泊先のホテルで行われた在留邦人代表との面会では、陛下はそれぞれの歓迎の言葉を直接、受け止め、一人一人の活動に対してねぎらいの言葉をかけられた。 この日の行事はすべて、陛下お一方で臨まれた。宮内庁によると、皇后さまは訪英の準備や旅のお疲れもあり、25日からの国賓としての公式行事に向けて体調を整えるため、同行した医師の判断により、ホテルで休まれたという。24日も、陛下お一方でのご視察などが予定されている。(緒方優子) |